去る1月26日、自民党では、有害鳥獣の増加により農地の荒廃や生態系破壊などが深刻になっている現状に鑑み、鳥獣被害防止特措法などの改正案を参院事務総長室で議員立法として国会提出しました。
鳥獣被害防止特別措置法等の法改正はなぜ必要であったのか?
現在、山村及び中山間地の人口の減少と高齢化に伴い、イノシシ、シカ等の鳥獣が激増し、農業被害が拡大する一方、農業者の営農意欲を減退させ、耕作放棄地を拡大させるなど農林水産業において深刻な荒廃を招いています。農林水産業の荒廃により、鳥獣のさらなる増加を招き、農業の被害拡大から農村地域の一層の荒廃といった悪循環に陥っている現実があります。昨今では、人間の居住地へのクマやイノシシ等の侵入も頻発しており人の生命や身体への危険性も懸念されています。
鳥獣の増加と、農村の荒廃の悪循環を断ち切り、これら地域の農業衰退を防止し、鳥獣から人命を守ることは国政の喫緊の課題であると考えられます。
また、有害鳥獣が増加することにより、微妙なバランスの上で成り立つ生態系にも深刻な影響を及ぼしています。シカの食害に伴う里地里山ではウグイスやノアザミの減少、南アルプスの高山植物の激減、知床の原生的自然の森林の枯渇、雷鳥の絶滅の危惧など、現状においてその深刻さは計り知れません。鳥獣の個体数を調査し、鳥獣保護と有害鳥獣の駆除とのバランスを確保し、生物の多様性の維持を確保しながら、持続可能な社会を実現していくことが必要です。
今後の農村地域を踏まえると、鳥獣被害防止において狩猟及び狩猟者の果たす役割はますます重要になると考えられます。有害鳥獣に強い捕獲圧力をかけ、他の動物とのバランスを取り戻すためには、狩猟者は行政や地域と連携し、狩猟、駆除及び個体数調整の主要な担い手としての役割が期待されます。しかるに狩猟人口は毎年減少の一途をたどり、高齢化している現実がありこれが鳥獣増加の一因となっていることは否めません。狩猟人口の増大と担い手確保が今後、急務の課題であることは間違いないと言えます。
また、捕獲した鳥獣を無駄にせず、自然の恵みとして、国産の貴重な食材として有効活用を図ることや、山村地域の新たな特産物や産業の掘り起こしなど考慮していくことが、今後の地域の活性化にもつながると考えられます。